ジョン・バンヤンの名作「天国への旅」（「天路歴程」）の最後に近い場面で、作者は主人公クリスチャンに「恵みによって！」と叫ばせています。最後の河を渡ろうとして濁流に呑まれそうになった時のことです。 　小説の主人公クリスチャンにとってだけでなく、キリストを主として受け入れているすべての信仰者にとって、「恵み」はその生活と切り離すことのできないものです。初代教会の宣教師パウロは「私は弱い時に強い」と書きましたが、それも「恵み」のゆえにであることを証ししています。 　「私は弱い時に強い。」−何と不思議なことでしょうか。通常、私たちの周囲の世界では、自分の弱さを見せることはしません。見せたが最後、つけ入れられ、骨までしゃぶられるようなことにさえなりかねません。しかし、キリストの恵みに生きる時、私たちは、パウロとともに「私は弱い時に強い。」と言えるようになるのです。そして、事実、自分の力なさを感じる時、全能の神に依頼むことを学び、そこに驚くような力と知恵の源を見出すのです。これが十字架の逆説、十字架による奇跡です。 　「あなたに主イエスの恵みがありますように！」

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